東京ドームの片隅で蠢くキャメルスーツ 杉谷拳士というバグめいた特異点を観測した

WBC

お前ら、視界の隅に異物が混入したまま放置すると、網膜の裏側にそれが癒着して取れなくなる現象を知っているか。いや、今俺が適当にでっち上げた医学的虚構なんだが、2日の侍ジャパン強化試合の中継を見ていて、まさにそんな感覚に陥った。

なぜ、そこにいるのか。

大谷翔平が、ついにあのユニフォームに袖を通す。それはプロ野球というちっぽけな枠組を超越した、天文学的な質量の恒星が誕生する瞬間に等しい。近づくもの全てを圧倒的な重力場に引きずり込み、光すら脱出できない事象の地平線。
そんな灼熱のグラウンドレベルの中心部で、なぜかキャメル色のスーツをキメた元プロ野球選手がマイクを握りしめている。

杉谷拳士である。

現役時代の成績だけを抽出して語れば、彼は偉大なユーティリティープレイヤーであり、チームの潤滑油だった。だが、バットを置いてからの彼の、メディアという広大な生態系への侵食スピードは、もはや未知の粘菌のそれだ。
バラエティ番組を制圧し、アメリカのキャンプ地に潜入し、挙げ句の果てには「Google検索コーチ」という、よくわからないがサイバーパンクな匂いのする肩書きまで獲得している。

そしてこの日、山本由伸らとヘラヘラ……いや、笑顔で談笑し、平然とリポートをこなしている。SNS上では「安心感」「稼いでる」「大忙し」などと呑気なテキストが流れていくが、お前ら、本当に事の重大さを理解しているのか。
彼が放っているのは「安心感」などという生ぬるい空気清浄機みたいな波動ではない。どんな過酷な環境にも適応し、強者の懐に音もなく潜り込む、冷戦下の諜報機関トップエージェントも青ざめるレベルの「絶対的生存能力」だ。

皆様におかれましては、この男の異常なまでの自己プロデュース力と、隙間産業を瞬時に更地にして高層ビルを建てるような手腕に、背筋の凍る思いがしないのでしょうか。
しがないおっさんである私は、画面の端に彼が映るたびに震えが止まりません。

大谷翔平という超新星爆発のエネルギー波をゼロ距離でモロに浴びても、微塵も細胞のDNAが破壊されないタフネス。この精神的防壁の強度を仮に「1スギヤ」という単位で定義した場合、我々一般人は0.00001スギヤにも満たず、グラウンドに立った瞬間にプレッシャーで灰と化す。
「現役の時の倍くらい稼げてる」じゃないんだよ草。
あのポジションを無意識の内に確立し、誰にも不快感を与えず、なんなら「羨ましい」とさえ思わせてしまう。
これはもう一種の認識阻害、あるいは集団催眠の類だろ。

プレースタイルで言えば、絶対に失敗しないバント職人が、気づいたら球団のオーナー席で葉巻を咥えていたようなホラー展開である。

まあ結局のところ、ワイのような偏見の塊の捻くれ者ですら、アイツが画面に映ると「おっ、拳士やってるな」と少し頬を緩めてしまう時点で、完全にヤツの菌糸に脳髄の奥底まで侵食されている証拠なのだが。

WBC、大谷の特大アーチに狂喜乱舞するのもいいが、ベンチ脇で蠢く謎のキャメルスーツの生態観察も悪くない。

野球のグラウンドには、やはり得体の知れない魔物が棲んでいる。

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