痛え。
右足の小指をタンスの角に強打して爪が絶望的な紫色に変色している。
あの鈍痛はなぜ人間の自尊心まで削り取っていくのか。
だいたい近所のコンビニ店員、商品を全部スキャンし終わってから「袋いります?」って聞くの遅くないか。
エコバッグを握りしめて待機している俺の右腕から発せられるオーラを少しは感じ取れ。
お前ら、WBC見てるか。
当然見てるよな。
我らが日ハムの北山亘基、初のWBC参戦である。
13日、鎌ケ谷で汗を流す同学年の清宮幸太郎からエールが送られた。
ファームは朝が早いから北山の登板時間は寝ているらしく、インスタやネトフリの見逃し配信で追っているらしい。
リアルタイム視聴を諦めてサブスクに頼るその姿勢、完全に我々と同じデジタルオタクムーブじゃないか。
それでも「怪我なくやってほしい」とシンプルに結ぶあたり、本当にただのいい奴である。
だが問題はここからだ。
北山が必死に考案したという「お茶たてポーズ」。清宮曰く「みんなもっとやってあげればいいのに(笑)」。
10日のチェコ戦前の円陣でも阪神の森下が「最近みんなサボりがち」と指摘していたアレだ。
これ、完全に町内会の寄り合いで若手が必死に提案した謎の親睦会企画が、長老たちに微妙にスルーされている時のあのいたたまれない空気感じゃないか。
誰かがやり始めれば義務感で乗っかるけど、自発的には誰も動かない。
侍ジャパンのベンチ、そんな薄氷の連帯感で回してるのかよ。
もっと狂ったように茶をたてろ。
千利休がドン引きして裸足で逃げ出すくらい、ベンチの端から端まで仮想の茶筅を振る舞え。
しかも清宮、「真面目キャラで広まってるのは許せない。真面目ぶっているだけ(笑)」と鋭利な刃物で友の仮面を容赦なく引っぺがす。
なんだよその愛に溢れた暴露。
同学年特有の、お互いのダサいところを知り尽くしているからこそのマウントの取り合い。
尊い。
尊すぎて、偏見の塊であるしがないおっさんの枯れた涙腺がドバドバと決壊しそうです。
どうか皆様、この青年たちの不器用で美しい友情を温かい目で見守ってやってはいただけませんでしょうか。
野球ってのはこういうベンチ裏のワチャワチャした人間模様が、マウンドでの一球に凝縮されるから狂おしいほど面白い。
数字の裏側に隠された、男たちの青春の残り香。
それを俺たちは一生吸い込んで生きていく。さあ、お前らも明日から元気に茶をたてようぜ。



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