野球場における「正しい観戦態度」なんてものは、どこの誰が定めたんだろう。ユニフォームを着て、タオルを振り回し、声を枯らして応援しなければならない。そんな息苦しい同調圧力に、私は常々うんざりしている。
テレビ画面の中央、ピッチャーが投球モーションに入るたびに必ず視界に飛び込んでくるバックネット裏の特等席。
そこに、なんとも優雅に頬杖をつき、今にも深い眠りの底へ沈んでいきそうな女性が座っている。
張り詰めた終盤の緊張感が漂うグラウンドとの凄まじいコントラスト。
彼女にとってここは、ビール売り子の声が心地よいアンビエントミュージックとして流れる、極上のオープンカフェなのだろう。あるいは、野球狂の連れ合いに無理やり付き合わされた、週末の過酷な修行なのかもしれない。
わかるよ、その気持ち。無理に熱狂の渦に飛び込む必要なんてどこにもない。球場という巨大な非日常空間で、ただ静かに退屈を貪る。それもまた、高いチケット代を払った者だけに許される、立派な大人の贅沢である。
だが、世間はそう簡単に許してはくれない。
「特等席で寝るなんてけしからん」「真剣にやっている選手に失礼だ」。画面の向こう側で怒りの棍棒を振り回す連中が鼻息を荒くしている姿が容易に想像できる。他人の休日の過ごし方にまで目くじらを立てるなんて、ずいぶん暇な人生を送っている。彼女のアンニュイな姿は、そんな自称・熱狂的ファンたちの狭い心に火をつける。
まぁ、彼女が夢の中でどんなドラマを描こうが、狂信的ファンたちがSNSでどれだけ血圧を上げようが、私の知ったことではない。どうせ私は明日も、文句を垂れながらこのチームの試合中継に付き合わされるのだから。


