人間の肉体というものは、思っている以上に物理法則の制約を強く受けているはずだ。そう信じて生きてきた私の常識は、いとも簡単に打ち砕かれてしまった。
スーパーの特売で買いすぎたレジ袋を片手で持とうとして、あえなく手首を痛める私の貧弱な日常と比べるのは失礼だと分かっている。それにしても、あのアクション映画のCGのような光景は、私たちの脳の処理能力を軽く超えている。
4/5のオリックス戦の7回に万波中正が放った5号勝ち越し3ランのことである。
ペルドモの外角スライダーに完全に泳がされ、下半身は崩れ、フィニッシュは片手一本。教科書通りならボテボテのゴロになるべき無様な体勢だ。なのに。なぜその打球がレフトスタンドの奥深くまで飛んでいくのか。しかも打球速度171キロ。
崩された片手で放たれた打球が、高速道路を走る車より速いのだ。ファンが「恐怖映像」と呟く気持ちも痛いほど分かる。もはや野球のプレーではなく、設定を間違えたゲームのバグ映像を見せられている気分である。打撃理論を真面目に語る解説者が不憫に思えてくる。
こんな常識を鼻で笑うようなプレーを見せつけられると、日々の些細な悩みなど本当にどうでもよくなってしまうから不思議だ。論理もセオリーも理不尽なパワーで粉砕される様を前に、私はただ呆れてため息をつくしかない。
どうせ明日もまた、文句を垂れながら彼らのあっと驚くプレーを期待してチャンネルを合わせてしまうのだろう。まんまとあの背番号66の引力に絡め取られているようだ。
物理法則のバグ?万波中正の「片手で171km/h弾」を考察する
日ハム

