おい、お前ら。築40年の雑居ビルの裏口で、ひっそりと増殖し続ける黒カビの生態を数時間眺め続けたことはあるか?あの、誰にも望まれないのに己の領土を淡々と拡大していく無機質な執念。
プロ野球という巨大なエンタメ産業の辺境で蠢く怨念も、得てしてそういうカビ臭い場所から発芽するのだと、しがないおっさんは常々思っているわけだ。
で、水谷瞬だ。
昨年の日ハム1番打者の打率、2割3分5厘。パ・リーグの他球団が2割5分超えでキャッキャウフフしている中、一人だけ絶対零度の真空空間に放り出されたようなこの冷たい数字。
その不毛のツンドラ地帯を最も多く歩かされたのが彼である。
「僕のことを言われてるんじゃないかという気持ちにもなっていた。なんかムカつくので、今年は1番という打順にこだわってやっていきたい」
なんかムカつく。
あぁ、なんという素晴らしい響きか。
現代野球にはびこる「チームの勝利のために」みたいな、漂白剤で徹底洗浄された無菌状態の定型文を木っ端微塵に粉砕する、純度100%の初期衝動。
ワイはこの一連の感情の代謝プロセスを「自我の嫌気性発酵」と名付け、密かに特許出願の準備を進めております。皆様の温かいご支援をお待ち申し上げております。
そもそも野球なんてものは、完璧なスイングが野手正面を突いて凡打になり、バットの根元で折れたクソ打球がポテンヒットになる、熱力学の第二法則をガン無視したような狂ったシステムで回っている。だからこそ、最後に信じられるのは「ムカつくから打つ」という、極めて原始的な闘争心だけなのだ。
オープン戦でのタイムリー。「いい拾い方ができた」とか涼しい顔で語っちゃいるが、そのバットの軌道には昨年溜め込んだ澱のような感情が、極めて高い物理的質量を伴って乗っかっていたに違いない。草生えるの通り越して、もう胞子が飛散して肺がやられるレベルの執念。
しかも「開幕スタメンで最後に1軍にいませんじゃ話にならない」と、143試合を俯瞰するメタ認知まで標準装備。1打席の結果でポジネガ反復横跳びしてるお前ら単細胞生物とは、そもそも見ている事象の地平線が違うのだ。
水谷が「ムカつき」を推進力に塁間を暴れ回る時、パ・リーグの平穏な生態系は確実に破壊される。
背番号53の逆襲、マジで最高に期待してイイね。



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