プロ野球選手が「結果よりも、楽しんで野球をしたい」と口にし始めたら、普通は危険信号の点滅を疑うべきだと思う。
開幕からまさかの3連敗。
ファンが頭を抱え、タイムラインが阿鼻叫喚に包まれるこのタイミングで、我がチームの主砲は「放課後の野球のように楽しみたい」と言い出した。普通なら熱狂的なファンの怒りの声が飛びそうなところだが、どうにも憎めない。
結果が全てだった過去の自分を否定し、「ただ上手くなりたい」と二軍落ちの日々さえも笑顔で振り返る。若くして悟りを開いてしまったアスリートは少し奇妙に見えないか。
最先端のトラッキングデータが飛び交う時代に、万波が夜な夜な見つめているのは田淵幸一の動画らしい。美しく描かれるアーチに彼なりの「感覚」を見出そうとしている。科学の進歩を認めつつも、最後は自分の感覚だけを信じ切る。デジタル社会のど真ん中で、急にフィルムカメラの良さを語り出す青年のようで、なんだか面白くなってくる。
開幕3連敗という現実。
チームの空気は重い。
でも万波はそれを笑い話にすると言い切った。
焦燥感はない。根拠のない自信だけがそこにある。結果が全てじゃないと涼しい顔で言いながら、ちゃっかり開幕カードで2本のホームランを叩き出している。
結局のところ、楽しむだの感覚だのと御託を並べようが、あの規格外のスイングを見せられたらこちらは黙るしかないのだ。彼の言う「笑い話」の結末はどうなるだろうか。


