春の到来とプロ野球セットがもたらす重力からの解放

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雪溶けの泥水と、掌で12球団の熱狂を貪る春の生存戦略

朝8時過ぎの帯広、雪解けの泥水がアスファルトを跳ねる音を聞きながら、俺は部屋のサッシの溝に溜まった黒ずんだホコリを無意味に凝視している。 おはよう、お前ら。そして、無事に息をしているだろうか。

今の時期、我々のようなしがないプロ野球ジャンキーの体は、深刻なエラーを吐き出し続けている。オープン戦の断片的な情報だけでは、脳内シナプスの結合が不完全なまま放置され、まるで廃墟のコンクリートの奥でひっそりと進行する白華現象のように、精神の根幹からポロポロと崩れ落ちていく感覚があるのだ。 ちょっとでも贔屓のチームの若手が三振を喫しただけで、自己の防衛機制が過剰に働き、無意識の深淵へとダイブして布団から出られなくなる。そんな偏見とトラウマの塊みたいな連中が、今年もまた球春という名の中毒症状に悩まされる季節がやってきた。

ふと冷静になって考える。 お前ら、まさか今年もあの虚無の儀式を繰り返すつもりじゃないだろうな。 満員電車の揺れに耐えながら、テキスト速報の更新ボタンを親指が腱鞘炎になるまで叩き続けるあの時間。 あるいは、無料で見られる違法スレスレの海外サイトを彷徨い、気づいたら謎のアラビア語実況で、解像度の粗いモザイクみたいな試合を見させられているあの屈辱。 あれはもはや、情報諜報戦における完全な敗北であり、デジタル裏社会での等価交換の原則を無視された搾取である。悲報なんてレベルじゃない、尊厳の喪失だ。

突然ですが、ここで皆様のささやかな日常を劇的に破壊、いや、救済するひとつの福音をお伝えしてもよろしいでしょうか。 スカパーのプロ野球セットである。 ああ、知ってるよな。野球狂なら誰もが一度は契約画面まで進み、配偶者の冷ややかな視線や、家計簿という名の冷酷な現実を前にそっとブラウザを閉じた経験があるはずだ。 だが、聞いてほしい。俺たちが本当に求めているのは、ニュース番組の最後に流れる綺麗に編集された2分間のハイライトじゃない。 1回の表、先頭打者が放った無意味なファウルの鈍い音から、最終回に抑え投手がマウンドの土をスパイクで均すあの神経質な所作まで、すべての因果関係を観察することなんだ。

スカパーのプロ野球セットの何がヤバいか。それは、12球団公式戦を徹底中継しているという圧倒的な事実だ。 これは単なる放送枠の話ではない。プロ野球という巨大な生態系の、細胞の代謝から壊死までをリアルタイムで神の視点から監視できるということだ。 さらに言えば、あの放送権の不可視領域、事象の地平線の彼方に隠されがちなカープ主催試合までガッツリ見られる。 これがないと、ペナントレースという複雑なパズルは永遠に完成しない。マツダスタジアムの芝の青さと、スタンドを揺るがすスクワット応援の地鳴り。あれを視神経に直接流し込まないと、我々の感情の摩擦係数は適正値を保てないのだ。

そして、ここからが現代の錬金術、いや、呪術的なテクノロジーの恩恵だ。 テレビの前に縛り付けられる時代は、すでにジュラ紀の地層の奥底に化石化して埋まっている。プロ野球セットアプリを使えば、スマホで試合を視聴できる。 お前らのその薄汚れた掌の上で、12球団の熱狂が完結する。 会社のトイレの個室という極めて局所的な閉鎖空間で。あるいは、どうでもいい飲み会の帰り道の冷たい夜風の中で。 どんな状況でも、ワンタップで推しのクソみたいな残塁の山(失礼)や、理不尽なまでの逆転劇にアクセスできる。 このアプリは、我々の日常の些細な隙間をすべて野球という名の高濃度エネルギーで埋め尽くす。物理学の法則を無視して、お前の手の中で1メガ・ペナントの熱量が爆発するのだ。

で、だ。 俺みたいな、すでに人生の消化試合をダラダラとこなしているおっさんには関係のない話なんだが。 もし、今これを読んでいるお前らが、まだ未来への希望なんてものをうっすら残している30歳以下の若者だとしたら、少しだけ耳を傾けてほしい。 スカパーさん、今「U30割キャンペーン」ってのをやってる。 3月、4月の期間限定で、30歳以下の若年層向けに、この狂気の中継セットをお得にバラ撒いているんだ。 マジで草も生えない。いや、大草原不可避だ。 俺が若い頃にこんなチート級のシステムがあったら、間違いなく大学の単位をすべて溶かし、就活の面接をバックレて、今以上に社会の底辺を這いずり回る立派な廃人になっていただろう。 だからこそ、若い奴らにはこれを使ってほしいんだ。 安く済んだ分のお金で、球場に行ってバカみたいに高いビールでも飲めばいい。そして、野球という名の美しくも残酷な泥沼に、頭の先までズブズブに沈んでしまえ。 どうせ人生なんて、思い通りにいかない理不尽の連続だ。それならせめて、贔屓の球団の理不尽な敗北に涙し、劇的な勝利に明日の生きる活力を搾り取るほうが、ずっと人間らしい生存戦略じゃないか。

なんだかんだ言って、俺たちは野球がないと干からびて死んでしまう。 新しいシーズンの足音が近づくにつれて、錆びた蛇口からポタリと落ちる水滴のような、静かな興奮が胸の奥で広がっていくのを感じる。 今年はどんなバグった采配が見られるのか。どんな規格外のルーキーが俺たちの度肝を抜くのか。 すべてをこの目で、この掌で、冷徹な観察眼と、どこか狂おしいほどの愛情を持って見届けようじゃないか。

とりあえず、俺は今からアプリを立ち上げて、推し球団の若手のオープン戦の打席を、顕微鏡で未知の菌糸類の増殖を観察するような目つきでリピート再生する作業に戻る。 お前らも、準備ができたら早くこっち側に来いよ。特等席は、お前のその手の中にあるんだからな。待ってるぞ。

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