眼球をタワシでゴシゴシ洗いたい衝動に駆られている。
スギ花粉の野郎が俺の粘膜を容赦なく蹂躙してきやがるせいで視界がひたすらにかすむ。
そういえばさっき近所のコンビニで「レジ袋いりません」って言ったら、店員が無言で明太子おにぎりをレジの端っこにポツンと放置しやがった。
なんだあのプレイ。俺への挑戦状か。
そんな日々のささやかなイラつきなんて、草薙球場の熱気の前ではチリガミみたいなもんだ。
お前ら、見たか昨日の9回の奈良間大己を。
9回1死三塁。見逃せば完全なボール球、あの低めに落ちるフォークをすくい上げて右前適時打。3打数1安打1打点。
常葉大菊川のピンストライプを着てた頃のアイツを思い出す。
高校通算21本塁打、3年夏の静岡大会なんて打率.818だぞ。
ふざけてんのか。
野球ゲームのチートモードでもそんな数字出ねえよ。
それが今じゃプロの水に揉まれて、昨季は86試合に出場して遊撃、二塁、三塁と様々なポジションをこなしながらも無失策。
完璧なバイプレーヤーとしての顔を持ってる。
「静岡のジーター」なんて華麗な異名で呼ばれてた男が、今はチームのムードメーカーとして一丁締めの音頭をとってるんだ。
この凄まじい落差。俺みたいな偏見の塊のしがないおっさんから見ると、まるでかつては栄華を極めた昭和の商店街で、今はもうサビついて半開きになったシャッターの奥から、それでも毎日最高に美味いコロッケを揚げ続ける肉屋の親父みたいな凄みがあるんだよ。
華やかなアーケードのネオンは消えても、確かな技術で客の胃袋を離さないあの感じ。わかるか。いや、わかっていただけますでしょうか。
新庄も粋なことしやがる。「4番・三塁」でスタメン起用って。
家族が見ている地元で、泥臭くフォークを拾い上げる姿。
最後の一本、いい場面で打てたって笑うその男の背中が、どうしようもなく愛おしいんだ。
優勝するには、こういうサビついたシャッターを自らの手でこじ開けるような奴が絶対に不可欠なんだよ。
お前らも奈良間の背中、ちゃんと目に焼き付けておけ。



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